年々高齢者の平均体力は向上しており、直近15年間で高齢者の身体状況が5歳程度若返っていることが明らかになっている。

「2040年多元的社会」(地域包括ケア研究会報告書)より

  • 介護保険創設時の要介護者の多くは、幼少期の厳しい衛生環境や戦争という「乳幼児・若年者が多く亡くなった時代」を生き抜いた世代であり、自らがその年齢まで生きていることを若い頃に想像するのは難しかった世代である。長寿を前提とした老後の準備を積み上げてきた高齢者ではなく、いわば「思いがけず長生きした高齢者」であったといえる。
  • そうした時代に比べ、2040年の社会では、要介護者の多くが、高齢期に入る前に介護保険の誕生を目の当たりにし、介護予防の重要性を知り、65歳まで、あるいはそれ以上に就労継続することが当たり前の時代を経験している。「人生100年時代」を迎え、現在の中高年齢者は、自らの人生の最終段階までの生活を十分に検討し、選択する時間が与えられている。そうした準備を経て2040年を迎えたときに、高齢者や要介護者のイメージはこれまでの時代と同様であろうか。
  • すでに2040年に向けて、前向きな変化もみられる。高齢者の社会参加が心身状態に与える積極的な効果についても研究が進んでいる。日本国内の「体力・運動能力調査」の結果を見ても、年々高齢者の平均体力は向上しており、直近15年間で高齢者の身体状況が5歳程度若返っていることが明らかになっている。また、近年の研究成果によれば、欧米における年齢区分別にみた認知症の発症率が10年前後で約2割改善しているという。したがって年齢階級別の要介護認定率も2040年までには、改善していく可能性がある。
  • 高齢者の社会参加も進んでいる。高年齢者雇用安定法の改正以降、65歳以上の就労環境は継続的に改善されており、高齢期の就労継続は、当たり前の時代になっている。こうした傾向は、2040年に向けて心身機能や生活機能の維持だけでなく、社会関係資本や社会とのつながりの面でもプラスの効果を生み出すだろう。