2050年、ある老人の介護物語。小ばなしのタイトルは「尊厳と習慣を護る介護は我々のプライド」です。ノリはNHKのLIFE ! 〜人生に捧げるコント〜、です。

この物語はフィクションです。

今は、2050年。地球の温暖化はますます進み、ここ札幌でも雪が降るのは年に数回になっていました。ある特養にHさんという要介護3の老人が入っています。この人は、その昔、この特養に仕事に来ていたと言われていました。

介護員の久保(仮称)は事務所に入ってくるなり、相談員の岡崎(仮称)に語気強め、皮肉まじり言った「あの顔の大きなHさん、コーヒーだしたら、また、私のことを叩いたんですよね。昔、社会福祉法人のコンサルタントをしていたかどうかは知らないけど、こう何回も叩かれるとね、だってコーヒーが好きだからっていうからさ。」

相談員の岡崎は、「えっ、Hさんが顔が大きいかは別として、コーヒー好きなはずだよ。それはさ、コーヒーがぬるいんじゃないの?あとはさ、コーヒーカップ変えるとかさ。」

そこに通りかかった同じフロアーの香川(仮称)は、「あの顔の大きなHさん、徘徊がきついのよね、施設長のはりる・じゃぽん(仮称)さんが、後ろから付いて歩けっていうから、止めないけど、原口(仮称)さんとか長友(仮称)さんも、Hさんのお世話はできないって言ってますよ。岡崎さんなんとかしてゴール決めてくださいよ。フォワードなんだから。」

そこで、ケアマネジャーの本田圭祐(仮称)と久保、香川、岡崎、原口で、本人が顔が大きいと思っていないHさんの今後の介護について話し合うことになった。岡崎は、「本当にHさんはコーヒー好きなのかな〜?それと、なんで徘徊するのかな〜?」と首を傾げながら、鼻毛が出ているのを気にもせずに呟くように言った(岡崎は泥臭いプレーが持ち味)。香川は、「相談員の岡崎さんがそんなんじゃ困るじゃないですか。もう一度、ご家族に聞いてくださいよ。好きなのは、コーヒーじゃなくて、紅茶なんじゃないですか?前からこんなに徘徊ぐせはありましたか?家庭でも人をよく叩いてましたかって。じゃなければ、サウジアラビアやオーストラリアには到底勝てませんよ」。相談員の岡崎は香川に顔を向けて「そんなこと言ったって、そう言われたんだからしょうがないだろう。ケアマネの本田圭祐さんだって、そういうケアプランになっているじゃないか!」。チームは分裂状態になったかに見えた。9月の予選第1戦でホームでUAEに敗れていた。

その時、ベルギーリーグで活躍している、介護員の久保が口を開いた「あの〜、私、いつも顔の大きなHさんと一緒にいるんですけど、いつだったか原口さんがスタバの袋を持ってきた時に、異常に興味を持ちませんでしたっけ?。で、その時は中に入っていたビスケットに興味があるのかと思って見せたけど、全然でしたよね」。原口は、ハッとした表情で、「そうだね、、、ひよっとしたら、Hさんは、コーヒーは好きなんだけど、、、そう、、、スタバのコーヒーしか飲まないんじゃないの?そういうことなんじゃないですかね?」。久保は続けて、「そうか!だから、徘徊しているのが、いつも朝なのは、起きてからコーヒー飲もうとスタバのお店を探して徘徊しているんじゃないのかな?」。香川は、「無口で人見知りで顔の大きなHさんは、コーヒーがすきなんだけど、スタバのコーヒーしか飲まない人で、出張が多く、ホテルに泊まっても朝はわざわざスタバを探してコーヒー飲みに行ってたってことか。たとえば、スタバがない都市の仕事は受けなかったみたいな。それとCoCo壹番のカレーと。そして、ホテルに温泉があるというのは絶対ですね。」

そこに通りかかったはりる・じゃぽんは「君たちは、いい視点でチームを見直しているじゃないか。福祉の原点は「尊厳と習慣を護る」ことだよ。まずは、Hさんの習慣をしっかり把握してフォーメーションを組んでいかないとアジア予選でさえ勝てない。なんで、今の行動になっているのかは、昔の習慣を知ることが大事なんだよ。そして、その尊厳をみんなで護ることが大事なんだよ。Hさんがどんな人でどんな習慣を持っていたか、もっと分析して試合にいどまないといけないよ。そうすれば、ロシアワールドカップには必ずいける!」

さらに、そこにディフェンスの吉田(仮称)が通りかかり、「みんな〜顔が大きい顔が大きいって、Hさんがかわいそうじゃないか。鏡に写したからだから安心してね言ってやれよ。本人はけっこう気にしているんだから。」(読んだ方から「こう書いた方がいいよ。」ってお話をいただいたので、物語とは関係ありませんが、ディフェンスの吉田を投入して加えさせていただきました。ありがとうございました)。

 

早速、ケアマネの本田と相談員の岡崎は、顔の大きなHさんがやっていた事務所のTさんとNさんに話を聞き、「コーヒーは、スタバかタリーズのものしか飲まない。もし、その街にどちらかのお店がなければコーヒーを飲まずに我慢していた。」という30年前の習慣を探し当てた。本田は「ケアプランを変えよう、週に一回は、札幌グランドホテルのスタバに行く。その前には、狸小路のココイチでやさいカレーのナストッピングを食べるってケアプランにしよう。」岡崎は「まさに自立支援ですね! これならオーストラリアにも勝てますね!」と力強く続けた。そしてこのケアプランは実行された。

 

それから、Hさんは、徘徊もなくなり、人を叩くこともなくなった。そして、毎週1回のスタバ+ココイチのカレーを楽しみに、穏やかな時を送ることができたのです。

 

その後、社会福祉法人さん向けにコンサルタントをしていたという、顔の大きなHさんは息を引き取った。看取りの時の顔は晴れやかであった。みんなでHさんをお見送りの時、岡崎はポツリと言った。「福祉のマインド(素)は尊厳と習慣を護ることなんだよな。」みんなは悟ったかのように頷いた。本田圭祐はドヤ顔で、「尊厳と習慣を護る介護は我々のプライドや」と言った。フロアマネジャーの長谷部(仮称)は左膝の手術のため、今回、出番はなかった。

 

お付き合いいただき、まことにありがとうございました。LIFE〜人生に捧げるコント〜で使ってくれませんかね〜。今日は、2時間空いたので、頑張りました。来週までは更新ありません。よろしくお願いします。

ハリルジャパン:2015年に組織された、サッカー日本代表の呼称。2018年ロシアワールドカップの出場を目指す。チームの中心選手、長谷部、本田、香川、岡崎、原口、久保、他。

 

HMSの小池さん、すみません。こんな話なら1〜2時間で書けるんですが、セミナーのレジメは締め切りになっても全く書けないんですよね〜。なぜでしょう?