2025年モデル
時代は流れ、ジャパン・アズ・NO.1と言われた時代を終わり、後に失われた20年と言われる厳しい経済情勢が訪れた。企業は、嘗(かつ)て、企業に果実をもたらせて付加価値を得る源泉の競争力が失われて行く。また、時代は世界経済を牽引するものとして、日本が得意とした自動車、家電、不動産などから、情報通信技術や金融などに変わってゆく。結果、日本は大きく国際競争力を失って行った。そして、経済の停滞に追い討ちをかけるように超少子高齢化社会が訪れる。
日本は、1990年の頃から、社会保障費の負担に苦しむようになる。国の想定を超えて、65歳以上、75歳以上人口が増えて行く。高齢者の増加は、医療費と介護に関わる支出を増大させて行く。加えて、核家族化した社会は、家では暮らせない介護を必要とする人を増やして行く。国は、増え続ける医療、介護のニーズに対応するため介護保険制度を創設する。
日本は、新しい制度の下、増え続ける高齢者に対応するべく、介護保険の持続可能性を探っていく。厚労省は、H16年にゴールドプラン21後の新たなプランの方向性、介護保険の課題、高齢者のあり方について検討する研究会を設置する。この研究会の目的は、団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年をターゲットにした新しい社会のあり方と高齢者のあり方を国民に示すこととし、その概念を「地域包括ケアシステム」とした。
そして、地域包括ケアシステムの啓蒙と具体的な政策提言を行うため、老健局の補助金事業を実施する。その事業により地域包括ケア研究会などが生まれ、その報告書が作成されるようになる。会のメンバーは、田中滋氏を座長とし、他の8名が参加。この研究会は趣旨は、2025 年を目標として、あるべき地域包括ケアの方向性とその姿を実現するために解決すべき課題を検討するとした。
この地域包括ケア研究会は、その後の日本の地域のあり方、高齢者のあり方、家族のあり方、介護のあり方、介護保険のあり方、法人経営のあり方を幅広く提案するとともに将来を示唆して行く。
今、日本において介護における政策は、地域包括ケアシステムしか存在していない。地域包括ケアシステムは、在宅を基礎として、医療、介護、行政、住宅、生活支援が切れ目なく有機的に連携を図り、本人の自立を尊重しながら住み慣れた地域で暮らすことを目的としている。
国は、2025年モデルをメインストリームと定め、山の上から地域へ。施設から在宅へ。特養から小規模多機能・看護小規模多機能・24時間定期巡回へ。施設から有老・サ高住へ。との流れをつくり、政策誘導をも使いながら在宅事業の普及と啓発を行ってきた。結果、小規模多機能・看護小規模多機能は、H30年12月末時点、全国で 5953事業所(うち、看護小規模多機能 540事業所)を数えるまでに増加している。また、有老とサ高住を足した部屋数は、H27年度統計で、特養をの数を約4万床上回る、約60万床数になっている。あくまでもWJU独自の見解であるが、もう、すでに、特養は介護保険事業の王様とは言い難い。
今、2020年を前にして、政策は、次のターゲットを2040年に置き、新しい議論が始まっている。その社会は、現在の延長線ではない、新しい考え方が必要として議論が始まっている。