「人口約4000人の長野県川上村では農繁期に約700人の外国人が働く。日本経済を支える貴重な戦力だ。」
「『1990年代以降、高卒就職者の大幅な減少を外国人労働者が補ってきた』と指摘する。90年に約60万人だった高卒就職者は2020年に約18万人と3割に減った。政府は永住前提の『移民』に慎重姿勢をとりつつ、外国人の非熟練労働者の受け入れを拡大した。」
「90年施行の改正出入国管理法で在留資格『定住者』を創設し、日系ブラジル人らの来日が増えた。93年には技能実習制度ができ、日本で学んだ技能・技術を途上国の発展につなげるとの名目でアジアから非熟練労働者を受け入れた。厚生労働省によると、93年に不法就労を含め約60万人と推計されていた外国人労働者は、2020年には約172万人に膨らんだ。」
「国内産業の担い手として不可欠な外国人材の『日本離れ』が懸念されている。今は人気の移住先だが、アジア各国が順調に経済成長すれば日本で働く魅力は薄れる。人口減が迫る中国との人材争奪競争も予想される。移民受け入れを否定し、途上国支援名目で人材を受け入れる技能実習制度は人権面の批判も根強い。選ばれる国であり続けるには心もとない。」
「近年注目される『国際移動転換理論』は経済成長と移民動向の関係は①開発が進むにつれ国外への移民が増える②さらに開発が進むと他の新興国への移住の魅力が薄れ、流出数が減少する③先進国への移住も魅力が薄れ、国外から流入する移民の数が流出数を上回る――というプロセスがあると考える。20年の国際通貨基金(IMF)の報告書は、新興国への移民は1人当たり国内総生産(GDP)が2000ドルを超えると減り、先進国への移民は7000ドル程度で減り始めると分析した。」
「かつて実習生の最大の送り出し国だった中国は13年に7000ドルを突破。この年に中国人実習生は減少に転じ、20年末は約6万3千人とピークから4割以上減った。中国に代わって最大の送り出し国となったベトナムの場合、20年に2785ドル。仮に過去10年の平均である年7%成長を維持すれば、30年代初めに7000ドルに達する。あと10年ほどで日本行きの希望者が減少する計算だ。」
「中国に代わって最大の送り出し国となったベトナムの場合、20年に2785ドル。仮に過去10年の平均である年7%成長を維持すれば、30年代初めに7000ドルに達する。あと10年ほどで日本行きの希望者が減少する計算だ。」
「ベトナムの次」として名前が挙がるのはミャンマー、ネパールなど。賃金格差や人口などが根拠だが、政情など不安要素も多い。
「現時点ではアジア各国で日本行きの希望者は多い」。国立社会保障・人口問題研究所の是川夕国際関係部長は指摘する。米調査会社ギャラップのデータを基にした是川部長の分析では、移住先としての日本の人気は18年はオーストラリア、米国、カナダに次ぐ4位。特に高学歴者の人気が高い。
将来の人材供給に大きく影響しそうなのが中国の動向だ。15~64歳の生産年齢人口は13年をピークに減少が続き、工場などで労働力不足が目立ち始めた。国際移住機関(IOM)は20年の報告書で「移民の送り出し国から受け入れ国に移行しつつある」と指摘した。
「遅くとも25年以降、外国人労働者を中国と奪い合うようになる」と予測する。