(2)地域包括ケアシステムの推進
○ 第2の柱は、地域包括ケアシステムの推進である。認知症の人や、医療 ニーズが高い中重度の高齢者を含め、それぞれの住み慣れた地域におい て、尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取組 を推進することが求められる。
○ このため、在宅サービスの機能と連携の強化、介護保険施設や高齢者住 まいにおける対応の強化を図るほか、認知症への対応力向上に向けた取 組の推進、看取りへの対応の充実、医療と介護の連携の推進が必要である。 また、ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保や、都市部、中山 間部など地域の特性に応じたサービスの確保に取り組んでいくことが必要である。
令和3年度介護報酬改定の対応
(1)認知症への対応力向上に向けた取組の推進
1 認知症専門ケア加算等の見直し
【ア:訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、訪問入浴介護★ イ:ア及び、通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介 護、短期入所生活介護★、短期入所療養介護★、特定施設入居者生活介護★、 地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護★、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施 設、介護療養型医療施設、介護医療院】
認知症専門ケア加算等について、各介護サービスにおける認知症対応力 を向上させていく観点から、以下の見直しを行う。
ア 訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、他のサービスと同様に、認知症専門ケア加算を新たに創設する。
イ 認知症専門ケア加算(通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護においては認知症加算)の算定の要件の一つである、認知症ケアに関する専 門研修(認知症専門ケア加算(I)は認知症介護実践リーダー研修、認知 症専門ケア加算(II)は認知症介護指導者養成研修、認知症加算は認知症 介護指導者養成研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研 修)を修了した者の配置について認知症ケアに関する専門性の高い看護 師(認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師、精神看護専門看護師及 び精神科認定看護師)を、加算の配置要件の対象に加える。なお、上記の 専門研修については、質を確保しつつ、eラーニングの活用等により受講しやすい環境整備を行う。
2 認知症に係る取組の情報公表の推進
【全サービス(介護サービス情報公表制度の対象とならない居宅療養管理指導を除く)★】
介護サービス事業者の認知症対応力の向上と利用者の介護サービスの選 択に資する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、研修の受講状況 等、認知症に係る事業者の取組状況について、介護サービス情報公表制度に おいて公表することを求めることとする。
3 多機能系サービスにおける認知症行動・心理症状緊急対応加算の創設
【小規模多機能型居宅介護★、看護小規模多機能型居宅介護】
在宅の認知症高齢者の緊急時の宿泊ニーズに対応できる環境づくりを一 層推進する観点から、多機能系サービスについて、施設系サービス等と同様 に、認知症行動・心理症状緊急対応加算を新たに創設する。
4 認知症介護基礎研修の受講の義務づけ
【全サービス(無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、 福祉用具貸与、居宅介護支援を除く)★】
認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の 保障を実現していく観点から、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向 上させていくため、介護サービス事業者に、介護に直接携わる職員のうち、 医療・福祉関係の資格を有さない無資格者について、認知症基礎研修を受講 させるために必要な措置を講じることを義務づける。その際、3年の経過措 置期間を設けることとする。なお、認知症基礎研修については、質を確保し つつ、e ラーニングの活用等により受講しやすい環境整備を行う。
(2)看取りへの対応の充実
1 看取り期における本人の意思を尊重したケアの充実
【短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、特定施設入 居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活 介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介 護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院】
看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携 を一層充実させる観点から、訪問看護等のターミナルケア加算における対 応と同様に、基本報酬(介護医療院、介護療養型医療施設、短期入所療養介 護(介護老人保健施設によるものを除く))や看取りに係る加算の算定要件 において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガ イドライン」等の内容に沿った取組を行うことを求めることとする。また、 施設系サービスについて、サービス提供にあたり、本人の意思を尊重した医 療・ケアの方針決定に対する支援に努めることを求めることとする。
2 特別養護老人ホームにおける看取りへの対応の充実
【介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】
特別養護老人ホームにおける中重度者や看取りへの対応の充実を図る観 点から、以下の見直しを行う。
ア 看取り介護加算について、以下の見直しを行う。
i 看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との 連携を一層充実させる観点から、要件において、「人生の最終段階にお ける医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことを求める。(※上記1の再掲)
ii 要件における看取りに関する協議等の参加者として、生活相談員を明記する。
iii 算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があることを踏まえ、現行の死亡日以前 30 日前からの算定に加えて、それ以前の一定期間の対応について、新たに評価する区分を設ける。
イ サービス提供にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めることを求めることとする。
3 介護老人保健施設における看取りへの対応の充実
【介護老人保健施設】
介護老人保健施設における中重度者や看取りへの対応の充実を図る観点 から、以下の見直しを行う。
ア ターミナルケア加算について、以下の見直しを行う。
i 看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との 連携を一層充実させる観点から、要件において、「人生の最終段階にお ける医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿っ た取組を行うことを求める。(※上記1の再掲)
ii 要件における看取りに関する協議等の参加者として、支援相談員を明記する。
iii 算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があるこ とを踏まえ、現行の死亡日以前 30 日前からの算定に加えて、それ以前 の一定期間の対応について、新たに評価する区分を設ける。
イ サービス提供にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に 対する支援に努めることを求めることとする。
4 介護医療院等における看取りへの対応の充実
【介護医療院、介護療養型医療施設、短期入所療養介護(介護老人保健施設によるものを除く)】
介護医療院及び介護療養型医療施設における看取り期における本人・家 族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、 以下の見直しを行う。
ア 基本報酬の算定要件において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことを求める。(※上記1の再掲)
イ サービス提供にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めることを求めることとする。
5 介護付きホームにおける看取りへの対応の充実
【特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護】
介護付きホームにおける中重度者や看取りへの対応の充実を図る観点か ら、看取り介護加算について、以下の見直しを行う。
ア 看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、要件において、「人生の最終段階における 医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組 を行うことを求める。(※上記1の再掲)
イ 要件における看取りに関する協議等の参加者として、生活相談員を明 記する。
ウ 算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があること を踏まえ、現行の死亡日以前 30 日前からの算定に加えて、それ以前の一 定期間の対応について、新たに評価する区分を設ける。
エ 看取り期において夜勤又は宿直により看護職員を配置している場合に 評価する新たな区分を設ける。
6 認知症グループホームにおける看取りへの対応の充実
認知症グループホームにおける中重度者や看取りへの対応の充実を図る 観点から、看取り介護加算について、以下の見直しを行う。
ア 看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、要件において、「人生の最終段階における 医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組 を行うことを求める。(※上記1の再掲)
イ 算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があること を踏まえ、現行の死亡日以前 30 日前からの算定に加えて、それ以前の一 定期間の対応について、新たに評価する区分を設ける。
7 訪問介護における看取り期の対応の評価
【訪問介護】
看取り期における対応の充実と適切な評価を図る観点から、看取り期には頻回の訪問介護が必要とされるとともに、柔軟な対応が求められること を踏まえ、看取り期の利用者に訪問介護を提供する場合に、訪問介護に係る 2時間ルール(前回提供した訪問介護からおおむね2時間未満の間隔で訪 問介護が行われた場合には、2回分の介護報酬を算定するのではなく、それ ぞれのサービス提供に係る所要時間を合算して報酬を算定すること)を弾力化し、2時間未満の間隔で訪問介護が行われた場合に、所要時間を合算せ ずにそれぞれの所定単位数の算定を可能とする。
8 通所困難な利用者の入浴機会の確保
【小規模多機能型居宅介護★、看護小規模多機能型居宅介護】
看取り期等で多機能系サービスへの通いが困難となった状態不安定な利 用者に入浴の機会を確保する観点から、多機能系サービスの提供にあたっ て、併算定ができない訪問入浴介護のサービスを、多機能系サービス事業者 の負担の下で提供することが可能であることを明確化する。
(3) 医療と介護の連携の推進
1 基本方針を踏まえた居宅療養管理指導の実施と多職種連携の推進
【居宅療養管理指導★】
居宅療養管理指導について、基本方針を踏まえ、利用者がその有する能力 に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、より適切なサービスを 提供していく観点から、近年、「かかりつけ医等が患者の社会生活面の課題 にも目を向け、地域社会における様々な支援へとつなげる取組」を進める動 きがあることも踏まえ、以下の見直しを行う。
ア 医師・歯科医師が居宅療養管理指導を行う際には、必要に応じて、居宅要介護者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支 援へとつながるよう留意し、また、関連する情報については、介護支援専 門員等に提供するよう努めることを明示する。
イ 薬剤師・歯科衛生士・管理栄養士が居宅療養管理指導を行う際には、必要に応じて、これらの支援につながる情報を把握し、また、関連する情報 を医師・歯科医師に提供するよう努めることを明示する。
ウ 多職種間での情報共有促進の観点から、薬剤師の居宅療養管理指導の算定要件とされている介護支援専門員等への情報提供について、明確化する。
2 医師・歯科医師から介護支援専門員への情報提供の充実
【居宅療養管理指導★】
医師・歯科医師による居宅療養管理指導について、医師・歯科医師から介 護支援専門員に適時に必要な情報が提供され、ケアマネジメントに活用さ れるようにする観点から、算定要件である介護支援専門員への情報提供に ついて、以下の新たな様式によることとする。
・ 医師による情報提供について、主治医意見書の様式を踏まえた新たな様式。
・ 歯科医師による情報提供について、歯科疾患在宅療養管理料(医療)の 様式を踏まえた新たな様式。
・ これらの様式においては、居宅要介護者の社会生活面の課題にも目を向 け、地域社会における様々な支援へとつながるよう、関連の記載欄を設けることとする。(※1ア関係)
3 外部の管理栄養士による居宅療養管理指導の評価
【居宅療養管理指導★】
管理栄養士による居宅療養管理指導について、居宅において栄養改善が 必要な要介護高齢者が一定数いる中で、算定回数が極めて少ない現状を踏 まえ、診療報酬の例も参考に、当該事業所以外(他の医療機関、介護保険施 設、日本栄養士会若しくは都道府県栄養士会が設置し運営する「栄養ケア・ ステーション」)の管理栄養士が実施する場合も算定可能とする。
4 歯科衛生士等による居宅療養管理指導の充実
【居宅療養管理指導★】
歯科衛生士等による居宅療養管理指導について、その充実を図る観点から、歯科衛生士等が居宅療養管理指導を行った場合の記録等の様式につい て、訪問歯科衛生指導料や歯科衛生実地指導料の記載内容を参考にした新 たな様式によることとする。
5 短期入所療養介護における医学的管理の評価の充実
【短期入所療養介護★】
介護老人保健施設が提供する短期入所療養介護について、短期入所生活 介護と利用目的や提供サービスが類似している状況があること等を踏まえ、 基本報酬の評価を見直すとともに、医療ニーズのある利用者の受入の促進 及び介護老人保健施設における在宅療養支援機能の推進の観点から、医師 が診療計画に基づき必要な診療、検査等を行い、退所時にかかりつけ医に情 報提供を行う総合的な医学的管理を評価する新たな加算を創設する。
6 認知症グループホームにおける医療ニーズへの対応強化
【認知症対応型共同生活介護】
認知症グループホームにおいて、医療ニーズのある入居者への対応を適 切に評価し、医療ニーズのある者の積極的な受入れを促進する観点から、医 療連携体制加算(II)及び(III)の医療的ケアが必要な者の受入実績要件(前 12 月間において喀痰吸引又は経腸栄養が行われている者が1人以上)につ いて、喀痰吸引・経腸栄養に加えて、医療ニーズへの対応状況や内容、負担 を踏まえ、他の医療的ケアを追加する見直しを行う。
7 退所前連携加算の見直し
【介護老人保健施設】
介護老人保健施設の入所者の早期の在宅復帰を促進する観点から、退所 前連携加算について、入所前後から入所者が退所後に利用を希望する居宅 介護支援事業者と連携し、退所後の介護サービスの利用方針を定め、その上 で、現行の加算の要件である退所前の連携の取組を行った場合を新たに評 価する区分を設ける。その際、現行相当の加算区分については、新たな加算 区分の取組を促進する観点から、評価の見直しを行う。
8 所定疾患施設療養費の見直し
【介護老人保健施設】
所定疾患施設療養費について、介護老人保健施設の入所者により適切な 医療を提供する観点から、介護老人保健施設における疾患の発症・治療状況 を踏まえ、以下の見直しを行う。
ア 算定要件において、検査の実施を明確化する。当該検査については、協力医療機関等と連携して行った検査を含むこととする。
イ 所定疾患施設療養費(II)の算定日数を、「連続する7日まで」から「連続する 10 日まで」に延長する
ウ 対象疾患について、蜂窩織炎を追加する。
エ 業務負担軽減の観点から、給付費請求明細書の摘要欄の記載を簡素化する。
9 かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し
【介護老人保健施設】
かかりつけ医連携薬剤調整加算について、介護老人保健施設において、か かりつけ医との連携を推進し、継続的な薬物治療を提供する観点から、以下 の見直しを行う。
ア 診療報酬の例を参考に、入所時及び退所時におけるかかりつけ医との連携を前提としつつ、当該連携に係る取組と、かかりつけ医と共同して減 薬に至った場合を区分して評価する。また、CHASE へのデータ提出とフ ィードバックの活用による PDCA サイクルの推進・ケアの向上を図るこ とを新たに評価する(減薬に至った場合の評価についてはこれを要件と す る )。( ※ 3 ( 2 ) 1 イ 参 照 )
イ 連携に係る取組については、入所に際し、薬剤の中止又は変更の可能性 についてかかりつけ医に説明し理解を得るとともに、入所中に服薬して いる薬剤に変更があった場合には、退所時に、変更の経緯・理由や変更後 の状態に関する情報をかかりつけ医に共有することを求めることとする。
ウ 入所中に薬剤の変更が検討される場合に、より適切な薬物治療が提供 されるよう、当該介護老人保健施設の医師又は薬剤師が、関連ガイドライ ン等を踏まえた高齢者の薬物療法に関する研修を受講していることを求 めることとする。
10 有床診療所から介護医療院への移行促進
【介護医療院】
一般浴槽及び特別浴槽の設置を求める介護医療院の浴室の施設基準につ いて、入所者への適切なサービス提供の確保に留意しつつ、介護療養病床を 有する診療所から介護医療院への移行を一層促進する観点から、有床診療 所から移行して介護医療院を開設する場合であって、入浴用リフトやリクライニングシャワーチェア等により、身体の不自由な者が適切に入浴でき る場合は、一般浴槽以外の浴槽の設置は求めないこととする。この取扱いは、 当該事業者が施設の新築、増築又は全面的な改築の工事を行うまでの間の 経過措置とする。
11 長期療養・生活施設の機能の強化
【介護医療院】
介護医療院について、医療の必要な要介護者の長期療養施設としての機 能及び生活施設としての機能をより充実させる観点から、療養病床におけ る長期入院患者を受け入れ、生活施設としての取組を説明し、適切なサービ ス提供を行うことを評価する新たな加算を創設する。具体的な算定要件は 以下のとおりとし、入所した日から一定期間に限り算定可能とする。
・ 入所者が療養病床に長期間入院していた患者であること。
・ 入所にあたり、入所者及び家族等に生活施設としての取組について説明を行うこと。
・ 入所者及び家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動等に積極的に関与していること。
12 介護医療院の薬剤管理指導の見直し
【介護医療院】
介護医療院の薬剤管理指導について、介護の質の向上に係る取組を一層 推進する観点から、CHASE へのデータ提出とフィードバックの活用による PDCA サイクルの推進・ケアの向上を図ることを新たに評価する(。※3(2) 1イ参照)
13 介護療養型医療施設の円滑な移行
【介護療養型医療施設】
介護療養型医療施設について、令和5年度末の廃止期限までの円滑な移 行等に向けて、より早期の意思決定を促す観点から、事業者に、一定期間ご とに移行等に係る検討の状況について指定権者に報告を求め、期限までに 報告されない場合には、次の期限までの間、基本報酬を減算する。
今日は、ここまで、、、